『檸檬』の草稿を高校3年生が見学しました 2020年10月02日
実践女子大学国文学科と大学図書館、中高国語科の連携により、大学が所蔵している梶井基次郎の『檸檬』の草稿が大学渋谷キャンパスの図書館で展示され、高校3年生が授業の一環として見学をしました。
この見学会は、生徒が現代文の授業で『檸檬』を読む時期にあわせ、昨年度から行っている高大連携の取り組みです。今年は新型コロナウイルス感染症対策を講じた上での実施となりました。生徒たちは教科書で学んだ小説の直筆原稿を目の前にしながら、作者の創作過程に思いをはせました。中には、この原稿を研究されている国文学科の河野龍也教授から直接説明を聞くことができたクラスもあり、生徒たちは直筆原稿の持つ尽きせぬ魅力を満喫しました。
同草稿はより正確には、『瀬山の話』と題される未完の長篇小説の下書き原稿です。『檸檬』はその中の一挿話でしたが、独立した短篇小説として発表されました。いたるところに梶井自身の書き込みや訂正があり、作家の試行錯誤の過程をうかがい知ることができます。96年前に書かれたこの草稿は長らく所在不明となっていましたが、実践女子大学が2011年に古書店から購入。近代文学の名作『檸檬』誕生の経緯を物語る第一級の資料といえます。河野教授によると「複数の短篇を組み合わせて長篇を作ろうとした梶井の構想がわかる」「創作の過程で長篇小説としては失敗してしまったが、かわりに『檸檬』という短篇小説の名作が生まれた」ということです。
生徒たちはまた、大学図書館、向田邦子文庫展示室、校祖・下田歌子先生の号を冠する香雪記念資料館など、大学の施設もあわせて見学し、大変有意義な時間を過ごすことができました。