校長室の窓から

　本日５月７日は、実践女子学園の123回目の創立記念日です。
　
　校祖下田歌子先生は、現在の岐阜県恵那市岩村で、岩村藩校教授の長女として生まれ育ちました。５才で和歌、俳句を詠み、７才で漢籍（漢文で書かれた書物）を読むことができました。聡明で、強い勉学の意思がありながら、当時、女性は藩校で学べませんでした。女性も学べる場所が欲しいという思いが募っていました。
　明治４年、16歳の時に、故郷に別れを告げ、東京に旅立ちました。その時に詠んだ歌が「綾錦」の歌です。
　　　　　　
　　　　　　綾錦　着て帰らずば　三国山　
　　　　　　　　　　　　またふたたびは　越えじとぞ思ふ

　「志を遂げることができないならば私は二度と故郷には戻らない」という強い決意の歌です。この時、少女は大きな志を抱いておりました。女性のための学び舎を作ることです。この28年後、1899年(明治32年)に本校を創立します。若き女性の高き志が本校の原点です。
　女性には教育は必要ないとまで言われていた時代に、いち早く女性の社会的地位向上を目指し、その基礎が女子教育にあることを確信していたのが下田歌子先生です。
　
　大切なことは、本校は、女性の地位向上のための一つの拠点であったということです。実践だけが良ければそれでいいというのではなく、女子教育の輪を全国に広げるための拠点であったということです。実際に先生は、各地の女子教育機関の創立、運営に精力的に関わっていきました。その結果、近代女子教育の確立という未来を切り開き、時代を変えたのです。私たちはその恩恵に浴しています。

　以上の意味で、本日の創立記念日は、本校創立の記念日という意味を越えて、我が国の近代女子教育が本格的に動き出した記念の日であるともいえるのです。

　このように、下田歌子先生は本校を創立したわけですが、ご自身は一度も教育機関で学んだことはありません。歌人として、文章家として、また源氏物語講義でも有名ですが、日本の古典籍全般に通じ、漢籍に通じ、英語にもフランス語にも通じていました。全て、自らの意思で生涯学び続けた結果なのです。明治・大正・昭和の時代を通じての生涯教育のモデルというべき方です。
　
　創立記念日にあたって、生徒の皆さんには、校祖に学び、生涯学び続ける力の大切さについても考えていただきたいと思っています。