校長室の窓から

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校長室の窓から「門出の日に」 2022年03月14日

(3月3日に行われた高校卒業式の式辞をお届けします。)

 皆さんが、六年間親しんできた校内の桜、その花芽もふっくらとしてきました。間もなく開花の時期を迎えます。春の息吹が、豊かに感じられます、この良き日に、ご来賓並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、令和三年度、実践女子学園高等学校の卒業式を挙行できますことは、本校教職員が等しく喜びとするところでございます。

ただいま、二百十一名に卒業証書を授与いたしました。
 本日、晴れて卒業を迎えられた皆さんに、心からお祝いを申し上げます。ご卒業おめでとうございます。
  また、入学以来様々な形でお嬢様の成長を支えられ、見守られてこられた保護者の皆様におかれましては、本日のお喜びは、一入のものがおありかと存じます。改めまして、教職員を代表して、衷心よりお祝いを申し上げます。

 さて、卒業生の皆さん。
まず、はじめに、これまでの長い年月、みなさんの成長を願い、六年間、本校に通う環境を整えられ、全力で支えてくださったご両親をはじめ、みなさんを支えてくださった多くの方々に、この機会に改めて、感謝の気持ちを伝えていただきたいと思います。

皆さんは入学以来の六年間、「堅実にして質素、しかも品格ある女性の育成を目指し、これがため、生徒は良識を養い、実践を尊び、責任を重んずる」という教育方針の下、この言葉にふさわしく、心身ともに健やかに成長されました。そのことを何よりもうれしく思います。皆さんは私たちの自慢の生徒です。

 本校は女子教育の先駆者、下田歌子先生が「女性が社会を変える、世界を変える」という高い志を持って明治三十二年に創立されました。
 校祖は、女性の社会的地位がほとんど問題とされなかった時代において、いち早く女性の地位向上を目指し、その基礎が女子教育にあることを確信していました。その高い志と、ゆるぎない信念により、本校は発展を続け、女性には教育は必要ないとまで言われた時代を変えたのです。私たちは、校祖の高い志を受け継ぐ者でありますが、皆さんにもまた、この高い志が受け継がれていくことを切に願っています。
 あなたたちが、社会をより良く変え、世界を変えるのです。その気概をもって、生涯にわたって学び、学んだことを実践し、社会に貢献しなさいという教えです。ここに、本校のすべての教育プログラムの源泉があり、校名の「実践」の由来もあります。

 今、皆さんの胸のうちには、どのような想いが去来しているでしょうか?皆さんの六年間はどのようなものだったのでしょうか?
教室での教科の学習はもとより、各種委員会活動、部活動、多くの学校行事を通して、さまざまな能力を開花させ、伸ばしていく皆さんの姿を見てきました。特にこの二年間は、新型コロナ感染症の拡大が重くのしかかっていました。皆さんの安全を第一に考えて、学校生活に多くの制限を加えるという、苦渋の決断を何度もしなければなりませんでした。申し訳なく思っていました。皆さんの涙も見てきました。しかし、皆さんは嘆いているばかりでなく、直ぐに切り替えて、そのような環境を正面から受け止めて、限られた時間、限られた機会を活かして、皆で知恵を出し合い、工夫をして、精一杯の成果を残してくれたのです。そこには思いやりがあり、それは私たちにも向けられ、そこには笑顔がありました。皆さんはコロナに負けていませんでした。そのような皆さんの姿にどれだけ勇気づけられたか分りません。皆さんを誇りに思います。
皆さんは、今後、どの様な環境においても、しなやかに力強く乗り越えて行かれると確信しています。

皆さんにとっての実践女子学園が、生涯の先生、生涯の友に巡り会えた、かけがえのない学校であり、いつでも帰ってきたい母校として、皆さんの心に深く刻まれることを願ってやみません。卒業後も、本校を度々訪ねて来てください。その時は「おかえりなさい」とお迎えします。ですから今日は「いってらしゃい」とうい言葉で送り出します。

保護者の皆様に申し上げます。
現代、まさに不確実性の増す時代です。規範も緩みがちな風潮にあります。その中で、お嬢様には、教職員一同、女子教育の伝統を踏まえ、変えなくてはならないもの、また、変えてならない大切なものを、しっかりと手渡してきたつもりです。至らぬこともあったかと存じますが、このように立派に成長されたお嬢様に免じてお許しいただきたく存じます。
本校の教育方針に関しまして、これまで賜りました皆様のご理解とご協力に改めて御礼申し上げます。

 最後になりましたが、万感の思いを込めて、卒業生の皆さんと、ご臨席を賜りました皆様のご多幸と、ご発展をお祈りして、式辞といたします。

 卒業生の皆さん、いってらしゃい。

令和四年三月三日 実践女子学園高等学校 校長 湯浅茂雄

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